目次
1.南方駅の立地と構造
2(本題).目的のホームへ行く方法
3.おわりに
1.南方駅の立地と構造
2駅向こうに“梅田”があります。
1つ手前に戻ると神戸線、宝塚線、
さらにそれらから、有川浩の小説『 阪急電車 (幻冬舎文庫) 』の舞台となった今津線をはじめ、

伊丹線、甲陽線、箕面線、能勢電鉄などへと派生していく路線たちが織り成す網のある意味中心となる“十三”があります。
梅田、十三そして……という位置に南方という駅があります。阪急京都線には準急が停まる駅が多く、普通電車しか停まらないそれのほうが少ないくらいなのですが、快速が停まる駅となると数は限られてきます。

その限られた数の中に南方はあり、南方自身も、地下鉄御堂筋線の“西中島南方”がすぐそばにあるし、阪急線における新大阪駅の最寄でもあります(1km離れてるけど)。
梅田を支点にしたコンパスで鉛筆をぐるりと回せばビジネス街の円にスッポリと収まる南方。
飲み屋も多いし、夜の街を彩る誘惑に噎せ返るサラリーマンも行き交います。終電が南方に進入してきたとき、ラストチャンスを逃がすかとホームで待ち構える人で溢れかえります。
このざっくりとした説明だけでも、この南方が阪急電鉄株式会社にとってのいかに重要な駅かということをなんとなく分かって頂けたかと思いますが、ビックリするくらい駅の面積が小さいんです。
どのくらい小さいか。たとえば以前、北摂に住む僕が、南方から京都方面に乗って帰宅しようとした際、ウッカリして梅田方面のホームの改札を通ってしまったとき、
たいていの駅なら、互いのホーム同士をつなぐ階段や通路を歩いたり、田舎のほうの駅にはそれらが無いかわりに、改札を通った人のみが利用できる踏切を渡るなどして、反対のホームへ行くことができるという手段があると思いますが、
南方の場合、反対のホームへ向かおうとしたら、一旦改札を出て、駅舎の外へ出て、もう一度駅に入り直すという手段をとるはめになります。
線路を挟んでホームが2つある駅。そのホーム同士をつなぐ階段通路線路などの道があり、自由にホーム同士を往来できる駅舎。別個たる二つの肉体が、ほんの些細な一部分だけ、けれど強固に結びついているから“ひとつ“となし得ている、そんな快楽の呼応にもよく似た駅舎を“性交型”と僕はしています。

一方で、地下鉄やモノレールの駅でよく見られる、1つのホームの両サイドに2つの線路があるヤツもありますよね。もう完全に一つの肉体をふたりの魂がシェアしている状態の駅舎。僕は“ガンダム型”と呼んでいます。

性交型でもガンダム型でもない駅、それが南方。
線路が真ん中に通っているけれど、もちろん線路に僕たちは立ち入れません。立ち入れない線路を挟んで、肉体が2つ、ポツン、ポツン、とあるだけ。結合しているわけでもない。合体する素振りすらみせない。線路を隔てて、似通った緯度経度位置関係で対峙しているだけ。
この南方を1つの駅舎だとみなしている方がおかしい。1つじゃねえよ、2つだろ? 同じ場所に駅が2つあるってことだろが。完全に別物だよ。今すぐ「南方A駅」「南方B駅」に改名しろやコラ!
なんなんだ! ホーム同士繋がってないから一旦改札出ろってよ!

2(本題).目的のホームへ行く方法
しかし、いくら不平不満を垂れても理不尽な世の中は石のように動かないというものです。では、もし僕のようにウッカリ反対のホームに入ってしまい、目的のホームへ行きたいとき。どのように迅速に対応できるのか。
ここで重要になってくるのは、反対のホームの改札をどのようにして出るのか、です。
やはり、南方には僕のようにウッカリと反対のホームへ入ってしまう人が多いようです。取り分け、飲み屋に囲まれているような“南方A”と“南方B”の2つの駅なので、酩酊状態でウッカリするサラリーマンが続出するだろうことは火を見るより明らかです。
その明らかな成り行きが日常茶飯事なのでしょう。南方A南方Bの各ホームに、「 駅係員よびだしインターホン 」が何台か設置されています。


画面に表示されている「↓」に差されている赤いボタンを押すと、
駅係員さんとのテレビ電話が始まります。液晶に表示された駅係員さんに、ウッカリした旨を伝えると、
「では〇〇西改札口の×番の改札を開けておきますので、そちらのほうから出てください」
と言われます。
ちなみに、京都方面のホームに行きたかったのに梅田方面のそこにウッカリしてしまった僕の場合は「みなみ西改札口の1番の改札を……」と言われました。
駅舎の構造上、ABのホーム間を移動する場合、きた西とみなみ西を通過することが最短距離であるため、間違いなく西改札口を通るように指示されることでしょう。

僕のために開きっぱなしとなった、みなみ西を出て、目の前の踏切を渡り、きた西の前にやって来たのですが、さすがに、きた西の改札が開きっぱなしになることはありません。
なので仕方がない。改札口の横の駅員さん(ここには生身の駅員さんがいます)に声をかけました。

先述した通り、南方Aと南方Bの2つの駅をあたかも「南方駅」という「梅田と十三との間に駅は1つしかありませんよ」みたいな言い方をして、
AB間の駅舎間を往来する対策を講じない阪急であるがゆえに、ウッカリによる駅舎一旦追放劇に見舞われる利用者が続出することが目に見えているし、現にそういう人が多いのでしょう。
「あのぉ、すみません」と僕が駅員さんに声をかけます。「さっき間違えてアッチのホーム──」
「あっ、どうぞここを通ってください。」
と食い気味でした。というか、食われました。
僕はPiTaPaというIC乗車カードで改札を通ったので、みなみ西の改札にPiTaPaを通したことで、一度南方Aのホームに入ってしまった記録をテレビ電話越しの駅係員さんが消してくれたようで、
きた西を通るにあたって何かの手続きを待つ必要もありませんでした。こうして僕は京都方面のホームにたどり着けたのでありました。
文章化することによって煩雑な作業にも思われたかもしれません(といっても紙幅の大半が阪急に対する愚痴なのでそれが読者の皆さんを攪乱してしまったのでしょう)が、テレビ電話で駅係員さんを呼び出して、改札を出て改札に入り直すまでの作業は、まあ2分程度の話です。
しかも、南方A南方Bに携わる従業員の皆さんは、ホームの売店の店員さんに至るまで、ウッカリした旨を言えば、それに戸惑うことなく対応してくれます。実際ウッカリな僕はまず、売店の店員さんに相談して、よびだしインターホンの説明を聞きましたので。

コンビニに置いてある発券端末の使い方を店員に訊ねると、レジのバイト君がメチャメチャ戸惑って、客の我々に背を向けて、店に出てない店長さんか本社かどこかに電話をし始める、そして待たされる、みたいな事態に遭遇された方が少なくないと思いますが、
そういうようなことはないのでご安心を。用がなくとも使ってください、みたいな気概で目立つ場所に置いてあるので、皆さんもウッカリした際は、気軽に駅係員さんをよびだしてください。

3.おわりに
以上、今回は南方駅の駅舎が変! というお話をさせて頂きましたが、もし万が一、この記事を通して駅舎という視点から鉄道に興味を持たれた超絶変わり者の方がいらっしゃった場合、僕は、
『 あなたの知らない大阪「駅」の謎(新書y)─米屋こうじ 』
をオススメします。
特にそれの第四章では駅舎にフォーカスしているそうです。
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