“Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選”を読んで。~cigagraphyの灰皿みたいな本棚~

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目次

はじめに…
日本推理作家協会が厳選した短編集
Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 について


感想①:春の十字架─東川篤哉(ラノベ系)

感想②:人魚姫の泡沫─森昌麿(ラノベ系)

感想③:恋文─西澤保彦(がっつり推理系)

感想④:不惑─薬丸岳(サスペンス系)

感想⑤:言えない言葉~the words in a capsule~─本多孝好(日常系)

まとめ…
作者のファンの皆さん注意!
収録されている作品は、書き下ろしではありません
が、初めて読む方、読書初心者の方にはオススメです。

 

日本推理作家協会が厳選した短編集 Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 について

 

今回は、2017年10月13日に発売された、

Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

を読んだ感想です。

 

日本推理作家協会が毎年、発表されたミステリー(推理小説)に分類される短編小説から、出版社問わず、優秀な作品を複数選んで、それをアンソロジー形式にして、
講談社から再出版している
そうです。

 

講談社BOOK倶楽部3

画像引用:講談社BOOK倶楽部

 

で、2013年発表の短編ミステリーから厳選された作品のアンソロジーが、2017年4月に

Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 (講談社文庫)”として、

さらに10月に“Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 ”として文庫化されました。

 

今回は、
『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉さん
『刑事のまなざし』『Aではない君と』の薬丸岳さん
『MISSING』の本多孝好さん
等の作家さんの作品が収録
された、Love~の方をご紹介します。

 

 

なお、次章以降で述べていく感想の順番は、本の収録順とは異なり、
当ブログの筆者が感じた、作品ごとの雰囲気に合わせて独自の順番で並べ、カテゴライズしました。

青枠で囲った作品の概要は、当ブログの筆者がネタバレを避けつつ独自で書いたものです。

補足

“Life~”と“Love~”は文庫化される前に
ザ・ベストミステリーズ2014 (推理小説年鑑)
という一冊の単行本として発売されています。

文庫本2冊買うより、1冊にまとまっている方がいい、という皆さんは単行本の方をどうぞ。

 

 

ちなみに、今回ご紹介する本は、

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でご紹介した、
オンライン書店e-hon
で購入しました。

シガグラフィー cigagraphy

 

 

注文した本やCD

自宅に届くタイミングに家に居るか分からない
時間指定したら配送料かかるし、
だったら、職場の近くや帰宅途中の本屋さんで受け取れる方が便利かも

cigagraphy シガグラフィー e-hon シガグラフィー cigagraphy

せっかくあのスーパーで、あのショップで買い物、あのフードコートで勉強するから、
同じ施設に入った本屋さんで受け取れた方が手間かからない
な。

そんな皆さんに、e-honの利用がオススメです。

 

感想①:春の十字架─東川篤哉(ラノベ系)

本屋大賞を受賞し、ドラマ化も映画化もされた『謎解きはディナーのあとで』
その作者さんが書かれた、

純喫茶「一服堂」の四季 (講談社文庫)
という短編集に収録された作品です。

 

「週刊現代」が事実を読者に伝える雑誌とすれば、「週刊未来」は記者が事実の先にある未来を綴った雑誌。つまりはウソ記事だらけの雑誌。

だから村崎記者が目撃した殺人事件の現場を、臨場感溢れるルポルタージュとして書き上げたところで、
それが未解決ならばお前が「解決篇」を書けと一蹴する、ウソ記事雑誌の編集長。

「解決篇」のアイデアは見つからないかと現場周辺を歩く村崎記者は、とある喫茶店に立ち寄った…。

 

主人公の「俺(村崎記者)」が、自らの心情や登場人物の容姿や言動を、詳細に、かつ劇場的に語り手として表現しています。

ウィットに富んだ比喩が連続する情景描写
登場する二人の女性の強烈な個性が、萌え系アニメのような掛け合いと共に物語を進めていく様が、クセになるかもしれません。

情報量の多い文章ですがスイスイ読んでいけるので、
自然と軽快に展開していく小気味良さは読者に、頭の中での映像化を容易にさせます。

東川さんの作品を初めて読んだのですが、実写化される事を前提に作らているんじゃ、と思いたくなる作風や文体に、
そりゃあ本屋大賞獲るわなあ、と納得した僕でした。

 

感想②:人魚姫の泡沫─森昌麿(ラノベ系)

偽恋愛小説家 (朝日文庫)
という森さんの短編集に収録されている作品です。

 

本の編集者である月子は、〆切に追われる「夢センセ」に一瞬の隙をつかれ、缶詰用のホテルの部屋からの逃亡を目の前で許してしまう。

センセに連絡手段も断たれた月子は、逃亡先を、センセの処女作である自伝的小説の舞台となった地だとヤマを張り、電車に飛び乗った。

主人公が同級生に偶然再会した事で甦る高校時代の淡い恋を描いた、センセの作品を月子が思い出している、その車内で…

 

Love~に収録された5篇で、最も平易な文体で書かれています
一文一文が短いので、ページに文字がビッシリ詰められていません

センセの小説に描かれた物語へと歩調が合っていく、月子の物語。その歩調が加速度を増した時、物語が進んでいく方向を知りたくて
そこに文章の読みやすさも手伝って、ページをめくる親指もウズウズするかもしれません。

春の十字架同様、登場人物の個性の強さがありますので、そのあたりも馴染みやすい短編だと思いますので、
読書初心者、小説初心者の皆さんにとっての、導入編にオススメの小説です。

 

感想③:恋文─西澤保彦(がっつり推理系)

さよならは明日の約束 ”という西澤さんの短編集に収録されている作品です。

 

本の虫であるエミールが祖母・道子の書庫で手に取った、道子が社会人の頃に買った小説。そこに挟まっていた一通の手紙。

長方形の紙類は無意識に、読みかけの本に挟んでしまう道子の悪い習性は昔からのものだったが、その手紙に見覚えはない。
どうやら、あの頃の親友でありアパートのルームメイトであった工富さんが書いたものらしい。

その手紙に宛てたのは、映画監督のヒッチコック。英語で書かれた宛先は実在しない地名。そして、短い本文に工富さんが残したメッセージ…。

 

その謎に満ちた工富さんの手紙を眺め、振り返ったあの頃を語る道子と、
ミステリーを読み耽り会得した天才的な推理力で、工富さんの真意を探ろうとするエミール。

祖母と孫の会話はやがて、手紙の存在を知らなければ、道子自身すら一生認識する事もなかった、あの頃の自分と工富さんの、仲の良さ、を明るみにしていくのです。

なるべくネタバレや話の展開は、読んでからのお楽しみにしたいので、え? 何言ってんの? って感じの概要説明にしております。あしからず。

推理小説でありながら、部屋の中での祖母と孫の会話、というシチュエーションのみで構成される、この新鮮さが僕は好きでした
そしてなんといっても、工富さんが残した手紙の内容。これですよ。そこから、ミステリーが始まっていくのです。ここでは言えません。

 

感想④:不惑─薬丸岳(サスペンス系)

ヒット作『Aではない君と』の著者の薬丸さん、
その薬丸さんの作品の人気シリーズで、
TBSがドラマ化した『刑事のまなざし』の『刑事・夏目信人シリーズ』のひとつである

刑事の約束 (講談社文庫)
という短編集に収録されている作品です。

 

結婚式のスタッフとしてこの日の映像撮影を担う窪田はホテルのラウンジで、進行表に記された新郎の名前に、改めて決意を固くした。

ラウンジを出た窪田は声をかけられた。再開したのは高校時代の吉沢。今日は同窓会が、このホテルで行われる。

吉沢も夏目も、招待された目黒先生も、同窓会の出席者として、窪田が今日ホテルに来ていると思っているだろう。
しかし、結婚式もまた、今日、このホテルで、同窓会の会場と同じ階で開かれる…。

 

感想①②③でご紹介した、ライトノベルチックな作品とは毛色の異なる、硬派な短編サスペンスですが、
スピード感と臨場感をもって展開していきますので、敷居は高くありません

窪田の視点から始まり、窪田の過去を知る夏目の視点、その夏目が追う窪田の視点…こうして進んでいく物語。

同じホテルの同じ階で開かれる、とある結婚式と、とある同窓会。その二つに窪田が存在する事で漂う不可思議な物語は、人間として生きる読者一人ひとりの、こころと正義に
それぞれの大きさで波紋を広げることでしょう。僕の心にも広がりました。敷居は低いですが、読ませる短編です。

 

感想⑤:言えない言葉~the words in a capsule~─本多孝好(日常系)

MEMORY (集英社文庫)という本多さんの短編集に収録されている作品です。

 

このところ、友達の陽ちゃんたちから距離を置かれていた純だったが、久々に誘いの声をかけられた。
しかしその遊びの内容は「シニガミガリ(死神狩り)」。しかも陽ちゃんは真顔。

中学生の兄から死神の話を聞いたと陽ちゃんは言うが、死神の正体も、死神を狩る理由すらもよく分からぬまま、
近所の中学校の制服を着た女子の尾行を始めた陽ちゃん達について行く。

どうやらその女子は、商店街の一画にある『森野葬儀店』に入っていくらしい…。

 

『MOMENT』『WILL』に続く、商店街に住む幼馴染みの神田と森野の物語を描いた短編集『MEMORY』の中で、
二人の中学時代の姿を、近所に住む小学生が見て、小学生っぽく語られていくのが、この短編です。

『不惑』ともまた毛色が全く異なり、さらにいうと、文字通りの事件を追っていく他の4篇とは違い、事件は起こりません。出来事、が起こるくらいです。

けど、自分と人の繊細な感情、それらが複雑に絡まったときに起きるのが出来事で、
寄り添うように感情を汲み、絡まりを解きほぐそうとする人の、固い結び目を探す指の動きを、推理と呼ぶのかもしれません。

余計な語彙を省いて多くは語らず、優しく、でもしっかりと核心を突く文体
強くないから、自分を守ってしまうからこそ、登場人物が張り続けてしまう物語の伏線
静かな映画を観るような、読者の想像力が小さくも、たしかに高鳴る、そんな短編です。

 

まとめ…作者のファンの皆さん注意!収録されている作品は、書き下ろしではありません。が、初めて読む方、読書初心者の方にはオススメです。

 

上記にも書いた通りです。
実は今回、僕が一番言いたかったのがコレなんです(笑)

僕は本多孝好作品が好きなので、本多さんの作品が収録されている本が新しく出る、
とネットで知って、Love~を購入したのですが、
以前買って読んだ『MEMORY』に収録されてるヤツじゃん! と読んで気付きました。

 

cigagraphy シガグラフィー

 

ですので、作者のファンの皆さんは、この本に収録されている短編を、以前読んだ事があるかどうか
皆さんの記憶と本棚に訊ねてから購入される事をオススメします。

ですが、はじめて読む、という方、読書初心者には、サクサクっと色んな作風に触れられる本なのでオススメです。

ちなみに、収録されている短編の中で僕が一番好きな作品は、やはり、
言えない言葉』。
不惑』も面白かったですねえ。

 

 

 

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